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あなたのウ○コに値が付く時代が来る!?(腸内細菌の話その4)

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あなたのウ○コに値が付く時代が来る!?(腸内細菌の話その4)

あなたのウ○コに値が付く時代が来る!?(腸内細菌の話その4)

2019/03/30

腸内細菌はどこから入ってくるのか


 


 腸内細菌はどのようにして体内に入って来るのでしょう。とても素朴な疑問です。胎児は母体の中にいるときは無菌状態で育ちます。出産によって産道を通過する際に、まず最初の腸内細菌との出会いがあります。お母さんの持っている菌類との接触です。この機会は大変に重要なもので、本来は出産に伴い母親やその周辺のある程度汚い環境に放り出されることによって、雑多な菌類が乳児の体内に入りますが、これは人類の歴史が始まって以来の正しい営みと言えます。ところが近年の出産は非常に清潔な環境で分娩されるため、雑菌にまみえることなく保育箱に収容されてしまうので、腸内細菌一式を母親から受け取ったり、命に関わらない程度の病原菌に感染する機会が失われ、免疫の獲得が不十分なケースが増えています。


 



 パンダもコアラも生まれたての子供は母親の便をなめます。まさに腸内細菌のダイレクトな受け渡しです。そのことによってパンダは消化の悪い笹の葉を、コアラは毒性のユーカリの葉を食べられるようになるのです。動物には便を汚いと思う余計な知識がないのでしょうな。大人に比べて抵抗力のない乳幼児は、なるべく清潔な環境において悪い病原菌から距離を置いてやった方がいいだろうと私たちは考えがちですが、どうもそのような思いやりは当の子供達の将来にとってかえってマイナスになるようです。お母さん、赤ちゃんを健康に育てたいなら、あなたのウ○コをなめさせなさいなどとは口が裂けても言えませんけどね。


 


 人間の体は菌まみれであればあるほど健康的であるように作られています。先進国ではきれいな水、きれいな食品、あふれかえる抗菌グッズに囲まれて、雑菌に汚染される機会が減っています。ところが世の中が清潔になればなるほど、これに反比例するようにアレルギー疾患の患者は年々増加し続けているというおかしな実態があります。最新の研究では、環境の衛生化とアレルギーの増加との因果関係を専門家は「衛生仮説」と呼ぶようになりました。衛生仮説の考え方では、特に乳幼児期に様々な細菌に感染することが重要だとされています。人の免疫は感染することで獲得されますが、その経験が少ないと免疫の発達が不十分なため、ちょっとしたことでアレルギーが出てしまうのではないかと推測されています。


 


 近年、日本人が東南アジアやアフリカなどの奥地の、衛生環境が整備されていない地域に行く機会が増えています。当然のことながら、現地には日本では遭遇をしたことのない未知の感染症が待ち構えています。その結果大切な使命を帯びて現地に渡った日本人の多くが重篤な病気にかかり、目的を果たせずに撤退を余儀なくされるケースが増えているそうです。特に若い世代にその傾向が顕著だといわれています。不思議なことに、体力的には彼等に劣るはずの戦後生まれの高齢者には発症しない病気に若者が負けてしまうのです。これは若い世代の持っている免疫システムが脆弱だからではないかと考えられます。同じ病原菌には若きも老人も感染はするのですが、発症するかどうかはその病気に対する免疫が機能するかどうかで決まってしまいます。つまり若い世代よりも老人世代の方が多様な免疫を持っており、たまたま感染した現地の病気にうまく対応できたということのようです。


 


 昭和24年生まれの私ですが、ご幼少のみぎりを振り返ってみると、泥まみれくそまみれでいつも腹を空かしていたような気がします。風呂も三日に一度銭湯に行くのがせい一杯の贅沢で、衣類も数日着続けるのが当たり前でした。(同級生は皆そうでしたよ。)小学校の中途で始まった学校給食もおからやひじきばかりで、いまだにそれらは私の食材へのトラウマになっています。先日孫の小学校で催された「おじいちゃんおばあちゃんに給食を食べてもらうイベント」で今の小学生の献立を知る機会がありましたが、まるで夢のようにおいしい献立でした。


今の子供達に比べると随分と不潔な環境と質素な食材で育てられた私ですが、この十数年血糖値こそやや高いものの、インフルエンザにはかかったことがありません。私より五つ若い女房殿も同様で、娘夫婦や孫達がしばしばはやり病につぶれることを、何か別世界の出来事のように眺めていることがあります。


 



 強い人間とは何か。腕力があって喧嘩が強いという意味ではありませんよ。私たちは常に外部からの様々なストレスにさらされています。精神的なものもあれば、命に関わる細菌やウイルスによる感染症もその一つです。神様は様々なストレスに負けない対応力を生き物に備えてくれました。その一つが免疫システムと呼ばれるもので、多くは腸内の細菌が関与して作り出されています。私たちが長い人生を生きて行くためにはとても大切な生体のメカニズムです。ところがこの素晴らしい防御システムが持つ唯一のウイークポイントは「感染する」という経験則からしか得られないものだということです。まるで人生そのものではありませんか。失敗は成功の元、挫折を知らない成功者はいない、その他色々な格言がありますが、人間とは痛い目に遭うたびに学習し、次の壁を乗り越える知恵と術を獲得する生き物なのです。


 


 


 むき出しの泥にまみれ、大家族で色々な人との菌の交換をしながら育った田舎の子供は、アスファルトによって泥に触れることもなく、空気清浄機の前で育った都会の子供よりもアレルギーが出にくいとか、0歳保育で保育園に預けられた子供は、他の子供達との雑菌の交換が頻繁にあるため、軽い感染症には掛かりやすいが、重篤なアレルギー症状は出にくいとか、日本の伝統的な発酵食品を食べない子供は腸内細菌の組成が外人のようになっており、日本の風土ではアレルギーが出やすいとか、そういった疫学調査結果はいくらでもあるようです。


 

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