炭酸ガスを考える
2019/10/31
炭酸ガスを考える
植物は炭酸ガスを吸収して酸素を放出します。それは水槽内で栽培している水草や海藻にも共通する代謝です。水草などが水中の炭酸ガスを吸収すると、水中の炭酸ガスの分圧が低下します。炭酸ガスが不足気味になると、次には水に溶解している重炭酸カルシウムの重炭酸イオンを吸収するものも出てきます。すると重炭酸カルシウムは炭酸カルシウムになって沈殿してしまいます。逆に何かの事情で炭酸ガスが供給されると、炭酸カルシウムは炭酸ガスと反応して再び重炭酸カルシウムとなって水に溶解します。
Ca(HCO3)2 ⇔ CaCO3+CO2+H2O
重炭酸カルシウム 炭酸カルシウム
炭酸カルシウムが存在する水槽に炭酸ガスを溶解させても、すぐにはpHは低下しません。それは上記の反応のせいです。これを水の緩衝作用と呼びます。緩衝作用が飽和状態になると、pHは低下し始めます。
一般的な水槽の飼育水には炭酸ガスはそれ程多くは溶けていません。飼育水中では溶解している炭酸ガスの量はpHと炭酸硬度との間に三角関係にあります。pHや炭酸硬度によって溶け込んでいる炭酸ガスの量が異なるのです。炭酸硬度が高く、pHが低いほど溶解量は多く、逆に炭酸硬度が低く、pHが高いほど溶解量は少ないのです。
水槽の性格?はセッティング方法によってpHが弱酸性もしくは弱アルカリ性を示すものとに分かれます。弱酸性を示すものは時間の経過と共にpHは少しずつ下がって行きます。この場合は炭酸硬度は非常に低く、pH低下は炭酸ガスによることは少なく、硝酸によるものが多いようです。水草を育てるために炭酸ガスを強制添加するとかえってpHが下がりすぎる傾向にあります。このような場合は強制添加をやめて、水換えでpHの回復をはかる方が安全です。
一方弱アルカリ性を示す水槽では時間が経過してもpHは下がらず、炭酸硬度も3~6dHを示します。サンゴ砂などを用いた水槽ではこの傾向が顕著です。このような水槽では給餌量がpHと硬度に密接な関係を持ち、エアレーションによってpHがさらに上昇することもあります。このような水槽に炭酸ガスを添加すると、pHは低下するものの次第に硬度が上昇します。それは炭酸ガスの作用でサンゴ砂などから炭酸カルシウムが溶け出すからで、植物は育てにくくなります。
昨今の水草水槽はソイルを底砂に使われる方が多いようですが、一昔前は大磯砂が用いられていました。貝殻などが混じった砂は水草の育ちが悪く、貝殻がすべて溶けきったものはうまく水草が育てられるということで、古い大磯砂が珍重されたことを思い出します。