微生物資材とは その2 2024/11/23 微生物資材とは? その2 種付けのバクテリアはどこから入手するのか? 1 最も簡単で安全な方法は、すでに魚を飼っている水槽をお持ちであればそこからバクテリアを移植します。 濾過槽のろ材でも底砂でも構いません。大量にバクテリアが繁殖していると思われる場所からバクテリアの定着基盤ごと移動させるのです。ちなみに底砂を半分取り出してしまった水槽の場合、水槽内に残されたバクテリアが元の数に戻るには、理論上は硝化菌では2日間ほどみておけば何とか復活するはずです。なぜなら硝化菌の倍加時間(倍に増える時間)はアンモニア酸化細菌の場合では1.5日、亜硝酸酸化細菌の場合でも2日とされているからです。底砂を半分取られた水槽でも数日のうちに元のバクテリア数に増え、浄化機能は復活すると思います。 2 ペットショップでは人の管理下で厳格に培養した種付け用のバクテリアが商品として売られています。メーカー名を上げるとすればさしあたって バイコム というブランドが良く知られています。小さなビンに詰められて商品棚に並べられていますのでご覧になった方もいらっしゃると思います。硝化菌と脱窒菌の2種類があるようでが、双方ともバクテリアを休眠状態にして充填されていますので、バクテリアがいないとか死んでしまっているなどの心配はないと思います。国内では有名なブランドですから信頼性には定評があります。ただパッケージの中に果たしてどのくらいの数のバクテリアが入っているのか詳細については説明書にも記載がありませんので私にも分かりません。安いものではありませんが、懐に余裕のある方には間違いの無い選択肢としてお勧めできます。 3 硝化菌を始め、水槽内で活躍するバクテリアの大部分は土壌細菌の末裔であることは前述しました。もし貴方のご近所に畑や田んぼがあれば、その土を一握り分けてもらい、水槽に投入することでもバクテリアの移植は可能です。実は1gの土の中には何と100億匹もの細菌群が棲んでいるのだそうです。1gで100億なら10gで1000億、100gなら1兆匹じゃん!! 一握りって何グラムになるのか、考えただけで何かワクワクしませんか? ただし、この方法にはいくつかのリスクが伴います。特に田んぼにはバクテリア以外にも様々な水棲生物が棲んでいますので、当然その種も混じっている可能性を考えなければなりません。それらの中には水槽内で良からぬ振る舞いに及ぶものがいるかも知れません。たとえばヒドラやヒルなどの仲間です。そのリスクとコストパフォーマンスを天秤に掛けて判断をしてください。 4 近年は耕作地の生産性向上のため、様々な微生物資材を散布することが行われています。実は微生物資材という用語自体この分野から生まれたもののようです。多くの場合、収穫量や作物の品質が改善されることになりますので、昨今は導入される農家も増えています。この場合、単独のバクテリアではなく、数十種類ほどの菌種を定評のある組み合わせで同居させている独特の調合がなされていることが多いようです。自然界においてバクテリアの多くは単独で働くよりも他の菌種との組み合わせによって相乗効果が得られ、飛躍的に生産効率が高まることが知られています。その組み合わせの妙が水中でも機能するかどうかは分かりませんが、可能性は秘めていると思われます。これらの農耕用の微生物資材を水槽に転用することも可能です。 問題点があるとすれば、本来は農耕用の資材ですので、即効性を求めて窒素系の肥料成分を含んでいるものもあります。飼育生物のいない初期の立ち上げ段階であれば特に問題とはなりませんが、すでに生物を飼育している既存の水槽に投入するのであれば、その含有量がなるべく少ないものを選択しなければなりません。それでも格的にはバイコムなどの数分の一程度で入手できますので、コストパフォーマンスは高いものになります。 5 水槽の立ち上げを目的として生きているバクテリアを投入して彼等の生息密度を高めるという使い方もあれば、すでに立ち上がっている水槽に定着しているバクテリアの活性を高めるという目的で投入される微生物資材もあります。 様々な微生物が増殖するときには雌雄があって生殖によって子孫を増やすのではなく、分裂によって自らのクローンを作り、その数を増やします。このとき様々な有機物を分解しながらエネルギーやクローンの原材料とするのですが、同時に増えた仲間の周辺におそらく仲間の役に立つと思われる様々な物質をも放出します。 人類はその分解物や放出物を自分たちの生活に役立てるという発見をして、意図的に増殖を促進させる手段を見つけました。私たちの役に立つものを作り出す分解行程を 発酵 と呼びます。役に立たない場合を 腐敗 と呼んで区別をします。 発酵によって作り出されるものには、お酒をはじめとして、味噌、醤油、味の素、近年では洗剤などにもその成分が利用され始めています。発酵はあくまで人間の側からの役に立つ、立たないの評価でしかありませんので、現状では腐敗とされているものの中にも将来有用な成分が見つかれば、発酵のグループに編入されるものがあるかも知れません