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硬度を考える

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2024/12/12

硬度を考える


 水の硬度とはなんでしょうか。よく言われるのは石けんを溶かしたときに泡立ちが良い場合を柔らかい水(軟水)、泡が立ちにくい場合をかたい水(硬水)などと呼び、区別しているようです。
 硬度という尺度は、水に溶けているカルシウムイオン(Ca++)やマグネシウムイオン(Mg++)、炭酸イオン(CO3--)重炭酸イオン(HCO3-)硫酸イオン(SO4--)の量によってあらわされます。



1 炭酸(塩)硬度 KH

 

 水に溶け込んでいる炭酸イオンと重炭酸イオンの合計量をあらわすもので、炭酸ガスが溶けて作る炭酸もこの中に含まれます。その多くはカルシウムやマグネシウムと結びついた炭酸塩や重炭酸塩の形で溶け込んでいます。一般的に炭酸硬度の濃度を示す単位としてドイツ硬度のdHを用います。

 

 炭酸硬度は水を沸騰させると沈殿してしまい、dHは0になります。そこに炭酸ガスを吹き込むと沈殿物が再び溶け出して硬度は上昇します。

逆の言い方をすれば、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムは炭酸ガスが水中に存在しないと水に溶け込むことができない物質なのです。つまり沸騰した水の中には炭酸ガスが存在できないので、硬度が0になってしまうのです。このように炭酸塩硬度は炭酸ガスと極めて密接な関係を持っています。


 炭酸硬度を計る計測法では溶解している 炭酸水素イオン の濃度を測定し、この数値から逆算して炭酸硬度を推定する方法が採用されています。

炭酸硬度は硬度という表現で表されてはいるものの、その中身は硬度物質であるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの実態を示しているわけではありません。後に述べる 総硬度 の中で炭酸塩が溶解して生じているとみなされる部分を指す数値でしかありません。その呼び方はさておいて、実際に意味するものはアルカリ度を示す指標とすべきものです。アルカリ度を簡単に言いますと、 酸を中和する能力の指標 ということになります。KHの試薬が示す数値が大きければ、炭酸硬度が高いということよりも pHが落ちにくい という捉え方をしておけば間違いはありません。


  


2 硫酸硬度(永久硬度)

 

 硫酸硬度とはカルシウムやマグネシウムが硫酸塩として水に溶け込んでいる時の硫酸イオンの量で、炭酸硬度のように沸騰させることで取り除くことができない物質であるため、永久硬度と呼ばれることもあります。


 


3 総硬度(一般硬度) GH

 

 水に溶け込んでいる炭酸塩や重炭酸塩、それに硫酸塩のカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量を測定し、換算した値が総硬度で一般硬度とも呼ばれます。


 水中の炭酸塩、重炭酸塩、硫酸塩の陽イオンがカルシウムやマグネシウムだけであれば、


  総硬度=炭酸硬度+硫酸硬度


となるのですが、実際の水にはカルシウムやマグネシウム以外の陽イオン(たとえばナトリウム)にも炭酸イオンや重炭酸イオンが結合して存在するためこの式は成り立ちません。


 例えば、飼育水に重曹(重炭酸ナトリウム)を入れてpHを上昇させるテクニックがありますが、重曹は水中で重炭酸イオンとナトリウムイオンとに分かれるため、炭酸硬度は上昇しますが、総硬度の測定ターゲットであるカルシウムイオンやマグネシウムイオンが増えるわけではありませんので、総硬度に変化は起こりません。炭酸ガスを溶かし込んだ場合も炭酸硬度のみが上昇し、総硬度が上昇することはありません。


 水槽内では飼育生物によって排出される炭酸ガスが炭酸を形成し、炭酸硬度が総硬度を上回ることがあります。水中に溶け込んでいる炭酸ガスが0ならば、カルシウムやマグネシウムと結合している炭酸塩や重炭酸塩は水中にとどまることができずに沈殿し、その値は0dHとなります。そこへ炭酸ガスを溶かし込ませますと、沈殿しているカルシウムやマグネシウムの炭酸塩は再び溶け出して炭酸硬度は上昇を始めます。

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