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バクテリアについて考える その3

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バクテリアについて考える その3

バクテリアについて考える その3

2024/12/16

ここではまず有機物と無機物の違いを知っておきましょう。

 

 下記の解説は進研ゼミ高校講座より抜粋したものです。

一般に、炭素Cを含む化合物を有機物といいますが、一酸化炭素,二酸化炭素や炭酸カルシウムなどの簡単な炭素化合物は無機物に分類されます。

炭素C以外に有機物を構成する元素として主なものには、水素Hや酸素Oや窒素Nなどがあります。

ここでは「炭水化物、タンパク質、脂肪などのように生物の体内でつくり出される物質は有機物」と理解して下さい。化学の分野では,人工的につくられる有機物もあります。

生物が体内でつくり出す物質は、植物が光合成によってつくり出した物質がもとになっています。植物は大気中の二酸化炭素を利用して光合成を行い、有機物を合成します。

草食性動物は植物を食べ、さらに肉食性動物は草食性動物を食べ、体内で必要な有機物をつくり出します。したがって生物体を構成する有機物は、すべてもとは大気中にあった二酸化炭素に由来する炭素Cを含んでいます。

 

無機物とは有機物以外のすべての物質です。

 

 先に示した二酸化炭素など簡単な炭素化合物と、水や金属などのように炭素以外の元素で構成されている化合物が無機物です。

従属栄養細菌の餌となる有機物は様々な分子の結合状態にありますから、その鎖を断ち切ってより小さな分子構造に分解しなければなりません。

なにしろ菌類には口も歯もありませんから、鎖を断ち切るには特別な手段が必要です。

そこで使われるのが菌類自らが作り出す分解酵素と呼ばれるものです。

分解酵素の働きにより極限まで小さく分断された有機物の分子は、やがて菌類の細胞膜を通過できるサイズになり、菌類のエネルギー源や体の構成物質として再利用されるのです。

 

 食物連鎖のピラミッドを描く場合、自然界ではその底辺に光合成により有機物を作り出す独立栄養生物が並べられるのですが、水槽内では彼等の絶対量は極めて少ないため、その部分を飼育者が与える「餌」という有機物で補う必要があります。

水槽の中に 自然界のメカニズムを取り込んで などと叫ぶ方たちもおられるようですが、本当のところはどうなのでしょう。

水槽内のエネルギー代謝のスタートラインが水草やサンゴなどの独立栄養をするものであればあながち言えなくもないのですが、そこから作り出される有機物の量は、自然界とは異なり基本的な生産力に劣る水槽という特殊な環境から生み出されるものですからおのずと制約があり、それによって同居する従属栄養生物の胃袋を満たすことはほとんど不可能と言えるでしょう。

飼育目的とされる生物が成長を阻害されたりやせ細ることは仕方ないにせよ、独立栄養生物の生産物量によって生息量をコントロールされる従属栄養細菌の絶対量も極めて乏しいものになり、やがては水槽内の様々な物質循環機能も貧弱なものになったしまうような気がします。

 

 水槽内の様々な細菌群の絶対量を、人間世界で使う「人口」をもじって「菌口」とでも呼んでみましょうか。

菌口は多い方が良いのか、少ない方が良いのか?この問題を考えてみましょう。

 

 菌の生息量は彼等が取り込む餌(専門的言い回しでは基質と呼びます)の量によってコントロールされます。

菌口密度は取り込める基質の量によって増えたり減ったりします。

濾過槽内の硝化菌の生息量も飼育生物の密度(彼等に与えられる餌の量、別の言い方をすれば排泄物の量)によって制約を受けます。

腹が減っては戦ができないのです。

従って濾過槽の熟成が終わった後は、飼育生物の量(給餌量)の増減によって硝化菌の菌口密度も増えたり減ったりすることになります。

往々にして起こりうることですが何かの事情で菌口密度に比べて給餌量が多すぎるようなアクシデントがあれば、その処理が追いつかずにアンモニアや亜硝酸の一時的な増加という危機的状況を招くこともあります。

 

 たとえば60cmの水槽に金魚が3匹飼われている水槽と30匹飼われている水槽を想像して下さい。

金魚のサイズと1匹当たりの給餌量は全て同一とします。

金魚3匹の水槽よりも30匹の水槽の方が金魚の排泄物も食べ残しの餌も多いであろうことは容易にイメージできると思います。

単純に割り切れば当然のことながら、それらの有機物を餌として利用する従属栄養細菌の生息量も10倍に、また金魚が直接あるいは従属栄養細菌が排泄物や残餌の分解結果として放出するアンモニアの量も10倍に増えるはずです。

それは硝化菌のボリュームも10倍に増やす条件ともなります。

従ってそれらの菌群が与えられた負荷(餌をもらえるのだから恩恵かも知れない)をすべて分解しきる活性があれば、3匹でも30匹でも理論的には遜色なく飼えることになります。

ところが現実には30匹の水槽は付着物が増え、水が黄ばみ、「ちょっと臭いな、魚が病気じゃね?」という水槽になることは皆さんが良ーく経験されるところです。

 

 細菌の数が倍に増えるのに要する時間を「倍加時間」と呼ぶことは前述しました。アンモニア酸化細菌の倍加時間は1.5日、亜硝酸酸化細菌のそれは2日とされています。

まずアンモニア酸化細菌が増え、それを追うように亜硝酸酸化細菌が増えて行くその時間差が0.5日あるということです。

この倍加時間が逆であれば、亜硝酸酸化細菌は十分な亜硝酸が得られずひもじい思いをしなければならず、飢餓によって十分な増殖速度も得られません。この0.5日の時間差はまさに神様の思し召しなのです。

 

ここで水中の二酸化炭素の話をしましょう。

 

 二酸化炭素は飼育生物の呼吸や有機物の分解過程から水中に供給される他、水面を経て空気中からも溶け込むことがあります。

水草栽培に二酸化炭素を強制添加されている方はご存じだと思いますが、二酸化炭素は水に溶けやすく、水から逃げ出しやすい性質を持った物質です。

また植物の光合成には必須の元素で生物由来の有機物の原材料の一つでもあります。

すなわち細菌やそれよりも小さいウイルスまでをも含めて、生命体の体を構成する物質として炭素は必要不可欠な元素ですから、その多くは二酸化炭素を利用して炭素元素を体内に取り込んでいるのです。

 

 従属栄養細菌は有機物を分解する過程で有機物に含まれる炭素を吸収できることは理解できますが、独立栄養を行っている硝化細菌の場合はどうしているのでしょうか。

答えは二酸化炭素から取り込むということになります。

じつはそこが大きなポイントです。

皆さんは濾過槽を熟成させる期間中にどのようなことをされていますか?

おそらく硝化細菌は酸素が必要な好気性細菌だからということで、少しでも酸素濃度を高めるために水槽内にエアレーションをしていませんか?

これは正解でもあり不正解でもあります。

 

 前述したとおり二酸化炭素は水に溶けやすく、かつ水から逃げ出しやすい物質です。従ってエアーレーションで溶存酸素を増やすことで硝化菌の呼吸代謝を高めることは可能なのですが、一方で水中から二酸化炭素を追い出すことにもなり、消化細菌の体作りの材料となる炭素の吸収という意味では不利な結果をもたらすことにもなります。

 

 

市販のバクテリア資材について

 

 水槽用に市販されているバクテリア資材の多くは、既存のバクテリアよりも優れたバクテリア群が水槽環境を改善するといううたい文句でその能力を誇示していますが、これらのバクテリア資材についていくつかの疑問を感じることがあります。

 

それらのバクテリアは生きているのだろうか?

 

 仮にそれらの菌が実験室内の培養期間中に優れた能力や効果を示したとしても、果たしてユーザーの手元に届いた時点で同様の結果が再現されるかどうかの判断は、ひとえに菌が生きているかどうかに掛かってくることはご理解いただけると思います。

 

バクテリア資材も商品としての流通経路を経て店頭に並ぶわけですから、当然ながら一定の保管・配送時間を要しているはずと考えるのが普通です。

特に好気性の菌群の場合、商品容器に充填されたその時点から容器内の酸素は消費され続け、やがて酸欠状態に至ることは明らかで、店頭であるいは倉庫で数ヶ月の待機期間を経た商品に生きている菌の存在を期待することはほとんど不可能ではなかろうかと思うのです。

 

脱窒菌のようなものであっても本来は好気性の菌が大部分です。

通性嫌気で酸素がなくとも生き抜ける能力があったとしても、酸素呼吸の代わりに硝酸呼吸を迫られるわけですから、あらかじめその分の硝酸濃度を高めておいても、やがてそれらを消費し尽くせば同様に酸欠に陥ることは明らかです。

つまり全く酸素を必用としない絶対嫌気の細菌以外の酸素(硝酸として窒素に結合している分も含めて)を必要とする菌群は、溶存酸素量に限界のある容器詰めで売られる販売形態には長期間耐えることができず、その多くは容器内への充填時から徐々に死滅して行き、やがてゼロになるのではなかろうかと想像するのは私だけでしょうか。

 

バチルス菌のように「芽胞」といういわゆる休眠状態の菌体であれば、長期間の保存に耐えることができるのですが、この場合でも出荷時の菌体密度を無限に維持することはできず、徐々に生きた「芽胞」の数は減ってくるのは仕方がないとの割り切りがあるようです。

ただバチルス菌の場合は生残密度が7割とか8割と比較的良好なので、実際に使用する場合には本来の菌体数に戻るまでの期間が短かく致命的な問題とはならないようです。

ユーザーの誰もが抱くであろうこのような不安に対し、おそらく流通期間中の酸素不足を想定して「仮死状態」や「休眠状態」にして出荷をしているのだとメーカーは説明するはずです。

まあ、うがった見方をすれば、市販のバクテリア製剤の多くは「へろへろ」あるいは「よれよれ」の食うや食わずの状態で生きながらえているものだと考えなければなりません。

 

 細菌の世界は排他的であると前述したとおり、人為的に投入された新参の細菌が、水槽という特殊な生態系の中での生存競争の勝ち組である先住の細菌群に打ち勝つことができると思いますか?

先住の細菌群との生存競争に勝ち残るために求められる条件は投入される菌自体の活性が高く、そしてできれば先住者を圧倒するような量を投入しなければなりません。

「へろへろ」「よれよれ」の菌をわずかばかり投入することに何の意味があるのでしょうか。

訳の分からぬ菌を投入して先住菌との生存競争を促すことは、先住菌が受け持っている本来の浄化機能を阻害することにもなるかもしれません。

何故なら先住菌は浄化機能を一時的にストップしてでも、新参の菌群を排除するためのエネルギーを使わざるを得ないからです。

優れた菌の活動によって現状よりもさらに良好な水質環境を得ようという目的で水槽に投入されるバクテリア資材においては、その生残率は極めて重要で「生きていなければ意味がない」という理解が必要です。

ショップの店頭に並べられている市販のバクテリア資材のほとんどには製造月日(充填月日)の記載がありません。

1週間前に詰めたのか、1年前に詰めたのかでその効果には雲泥の差があるであろうことは皆さんにもご想像いただけると思います。

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