光合成細菌を増やしてみましょう
2024/12/20
光合成細菌を増やしてみましょう
昨今メダカ飼育にチャレンジされる方が増えています。
SNSでメダカ飼育に光合成細菌が大変に有功だという情報が流れた結果でしょうか、おかげさまで弊社の光合成細菌「できたてPSB」や光合成細菌の培養餌料「ふやしてPSB」をお買い求めのお客様が増えています。
そこで、光合成細菌をご自分で増やされるお客様に培養の初歩的なアドバイスとなるような情報をご紹介させていただきます。
この文面はすでに数年前にアップしたものですが、今回ホームページをリニューアルした際に行方不明となっていました。
あらためて最新の知見も含めてご紹介したいと思います。
メダカのみならず、皆様のアクアリウムライフのお役立てれば幸いです。
光合成細菌を増やしてみましょう。
便宜上以後PSBという呼称で統一しておきます。
ここでは培養のための餌「ふやしてPSB」と種菌「できたてPSB」を用います。
安心してチャレンジできるように、まずは手始めに種菌を倍に増やしておきましょう。
培養する光合成細菌は生きていれば市販されている他社のものでも構いませんが、営業妨害のご迷惑を掛けるかも知れませんのでここでは弊社の「できたてPSB」を使うことにします。
「できたてPSB」は500mlのパッケージになっています。
これを半分ずつに分けて使います。
まず500mlの空のペットボトルを2本用意してください。
空きボトルに「できたてPSB」をおおよそ半分くらい移します。
あまり厳密に測らなくても大丈夫です。
おおよそ250mlずつ入った容器が2本できました。
これに「ふやしてPSB」のプッシュポンプのノズルを入れ、3回ずつプッシュして下さい。
1プッシュ1mlですから、それぞれに3mlずつの餌が入ったことになります。
寒い時期には菌の増殖スピードが極端に遅くなりますからむしろ餌の量を減らし1~2プッシュでも大丈夫です。
さらに容器に水道水を入れますが、中和する必要はありません。
容器の上部に少し空気を残しておくと、後々攪拌しやすいでしょう。
5月以降であれば、ボトルにふたをして日当たりの良い場所に置いておけば増え始めます。
時々ボトルを逆さにして沈殿物を溶かします。
また容器がへこんでいたらキャップをゆるめて空気を吸い込ませて下さい。
容器がへこむ理由はPSBと一緒に増えてしまう 好気性 の雑菌が容器内の酸素を使うからです。
ちなみにPSBは酸素を必要としない 嫌気性 の細菌です。
温暖期であれば、概ね1~2週間前後で溶液の赤色が濃くなり、種菌と同様の色合いになれば完了です。
これで次に使う種菌が2倍に増えたことになりますので、あとは同様の方法で倍々に増やして行けば良いのです。
種菌をいっぱい持っているといろいろな培養方法を試せるので、最初は種菌の量を増やすことに専念しましょう。
できあがったPSBの溶液には食べきれなかった餌がかなり残っていますので、そのままの状態で1年近く保存できます。
時間が経って容器内のPSBが餌を食べ尽くしますと、少しずつ細菌密度が下がり溶液の色が薄くなってきます。
最終的には透明になったり、緑色になることもあります。
緑色になった場合は緑色の光合成細菌が増えたのではなく、偶然に容器の中に飛び込んだクロレラなどの植物プランクトンが急激に繁殖したからです。
光合成細菌が死滅してその体が分解され、植物の肥料として使われたのです。
培養液の赤い色が薄くなってくるのは餌不足などでPSBの生息密度が減ってくるためで、薄くなった培養液でも餌を追加して日の光をたっぷり当てておけば元の色(細菌密度)に戻ることがあります。
ここまでは念のため元の種菌を倍に増やす方法をご紹介しました。
大量に増やしたい場合には種菌をどれくらい入れればよいのでしょうか?
貧乏性ですの で種菌としての必要最低限の量がどれくらいなのか調べてみました。
同一容量ののペットボトルにそれぞれ容量の10%、20%、30%、40%の種菌を入れてみます。
ボトルは2リットルのコーラの空き容器ですからそれぞれ200ml、400ml、600ml、800mlの種菌を入れたことになります。
ふやしてPSBをそれぞれ10プッシュ(10ml)(本来の規定投入量の半分)ずつ加え水道水で希釈します。
逆光でみるとご覧のような濃度差を感じることができます。
5月10日に培養を開始し、10日経過した時点の外観です。
外観では濃度差を感じることができない程全ての試験区の濃度が高まっているように見受けられます。
ここまでの経過では10%の種菌量でも十分に培養可能と考えられます。
種菌の量をもっと少なくしてみましょう
今度は1.5リットルのボトルに3%、5%、10%の種菌を入れて5月20日にスタートしました。
さすがに3%を希釈すると、ただの薄茶色の溶液でとてもPSBが入っているようには見えません。
1週間が経過しました。
10%区は前回の試験結果と同様にかなり濃密な菌密度を感じる赤褐色を呈しています。
5%区も明らかに赤味が増し、光合成細菌の増殖をうかがわせる経過を示しています。
ところが3%区はほとんど色の変化が感じられず、もしかしたら他の菌が優勢となって光合成細菌が死んでしまったのではないかと不安になりました。
念のためもう1週間待ってみることにしました。
するとどうでしょう、3%区にもあの赤色が出てきたのです。
開始時の10%区に匹敵する色合いです。
これはすなわち10%区の2週間遅れの培養状況と考えることができるわけです。
大まかな計算では2週間の培養で菌の密度が3倍になったと考えられます。
結論です。
PSBの培養には水温と太陽光が必要です。
日本国内においては5月から10月いっぱい位の期間であるならば屋外の常温下でエネルギーコスト無しで大量培養することができます。
今回の比較試験で明らかになったことは、種菌の量が多ければごく短期間で高密度の培養が可能であること。
そこに求められるのは上記の条件と適正な培養餌料だけであるということです。
一方、培養量のわずか3%程度の微量でも種菌があれば、時間はかかるものの、やがてかなりの高密度まで増えるということも確認できました。
3%区の発色に時間が掛かったのは、試験開始時の培養液の中には光合成細菌以外の従属栄養細菌が存在し、光合成細菌のための餌(ふやしてPSB)を添加したことにより、同じ餌で増える彼らのような目的外の雑菌の増殖スピードが光合成細菌を凌駕した可能性が想像されます。
ただ彼等の多くは酸素の必要な好気性細菌であるため、やがて培養容器内の溶存酸素が消費し尽くされると、酸素の要らない嫌気性の菌群が優勢になったのではないかと思われます。我等が光合成細菌も立派な嫌気性細菌です。
培養容器に用いたコーラの空き容器は材質がかなり柔軟ですので、培養が進むにつれて容器の外壁が「へこむ」現象が起こります。
これは容器内の溶存酸素が消費されてその分圧が下がり、容器内が陰圧状態になったからです。
ちなみに飲み終わったコーラの空きボトルに半分程水を入れて攪拌すると容器はへこみます。
これは容器内に残っていた炭酸ガスが水に溶け、その分だけ気体の体積が減ったためです。
滅菌処理のできる培養設備を持たない素人の我々が、PSBだけを純粋培養することはほとんど不可能です。
であるならばあえて純粋培養に拘ることなく他の雑菌も合わせて培養してしまいましょう。
PSBの悪臭は雑菌がもたらすものが大部分なのですが、それらも含めてPSBご一統様として扱う方が気楽に培養ができます。
PSBは臭いものなのだとの割り切りができれば何ということはありません。
農業分野などに用いられるPSBはそれが常識化しており、耕作地に撒かれたPSBに対して近隣から悪臭への苦情などは聞こえてきません。
(私たちが作る)PSBは確かに臭いのですが、実はその臭い菌が他の悪臭の元となる成分(アンモニア、インドール、スカトール、硫化水素など)をことごとく分解する(食べてしまう)素晴らしいパワーを持っているのです。
まるで人の世の人物評価のようではありませんか。
他人から後ろ指を指されるような一見悪人風の、あるいは風采の上がらぬおっさんが、実は悪を倒す正義の味方スーパーヒーローだったなんて夢のようなどんでん返しがあるのです。
ただいかんせん、あの匂いは、割り切りのできるあなた以外のご家族からは必ず顰蹙を買うことになりますから、保存方法や使い方にはくれぐれも十二分な配慮をして下さい。
培養容器を定期的に攪拌するには容器の上部に若干の空気が残っていた方が良く混ざります。
雑菌の多くは好気性の細菌ですので、容器内の酸素が使われてしまうとその分だけ容器がへこみます。
定期的にキャップをゆるめて空気を補ってやるとへこみは元に戻ります。
そうすると酸素不足で死んでしまうはずの好気性の雑菌も長生きをします。
良きにつけ悪しきにつけ、PSBと一緒に増えたそれらの雑菌も、もしかしたら水質改善に役立ってくれるかも知れません。