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微生物資材とは? その1

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微生物資材とは? その1

微生物資材とは? その1

2025/01/30

  アクアリウムの水質管理は、魚や水草に健康的な環境を提供する上で非常に重要なテーマとなります。

「微生物資材」は、もともと自然界に棲む様々な微生物や彼等の生産物質などを人為的に水槽内に導入することで水質を維持改善するためのグッズの総称です。


 1 微生物資材とは?
 
 自然界には数え切れないほどの種類の微生物が存在し、様々な物質の循環に関わっています。

彼等は喰う・喰われるの弱肉強食の関係をはじめとして、お互いを助け合う共生の世界に至るまで相互に微妙な関わり合いを持ってそれぞれの環境下で生きています。

 

  私たちが目指すアクアリウムの世界においても、その根底を支えているのは多種多様な微生物達の働きであることは論を待ちません。

私たちは目的とする飼育生物を、一見自らの管理下に置いて飼育しているように思いがちですが、実はその管理の大部分は人の目に触れることもなく水槽内でうごめいている無数の微生物達に委ねられているのです。

 

  多種多様な微生物のことですから、それぞれの働きのキャパが、あるいは彼等が作り出す生産物質にも微妙な差異があるはずです。

それらを外部から水槽内に導入することで、現状の水質環境や景観にも自ずと違った結果がもたらされるのではないかと期待を抱かされるのが人の常で、

その発想から生まれたのが微生物資材ということになります。

 


 2 水槽内の微生物のルーツは?

 従来の水槽システムは適当な容器に真水なり、海水なりを入れて水を回しておけば、いつの間にか魚を飼える状態になるという、ごくごくシンプルな熟成方式によりスタートするものが大部分でした。

 それは大気中を浮遊している様々なバクテリアが容器に飛び込み、その環境に順応して生き残ったものがやがて水槽内で仲間を増やし、必要な浄化機能を発揮するという極めて粗放的で悠長なものでした。

当然のこととして、できあがった水槽には主役のバクテリアの違いにより微妙な違いが生じ、この水槽は付着物が尽きにくいとか、この水槽は繁殖がうまく行くとか、まさに水槽に個性を感じるようになります。

  皆さんが大きく深呼吸をすると、肺の中には1万から10万匹ものバクテリアが吸い込まれるそうです。

大気中にはまさに無数の微生物が浮遊していることをまず知っておいてください。

 

 彼等はどこから飛んでくるのか、興味が湧きませんか? 

彼等はあなたの身近な生活空間からやって来るのです。

近所に畑や田んぼがあればその耕作地から、公園があればその敷地内から、富士山のてっぺんからも、遠くの海のしぶきの一滴がそのルーツであることも否定できません。

風に乗ってどこからか飛んできて、どこかに定着する。

これが微生物の子孫拡散の方程式なのです。
 
 従来の自然熟成を待つ方式では、水槽内に毎日様々なバクテリアが飛び込みます。

おそらく数百万、数千万、数億かも知れません。

それらの中から水槽環境にうまくマッチングしたものだけが、やがて定着し新たな新天地の中で子孫を増やして行くのです。

相性の悪かったものは増えることなく死に絶えるのですが、生き残る比率がどれほどのものかなど分かるはずもありません。

いずれにせよ、ものすごい数のバクテリアが飛び込み、その中の幸運なごく一部が水槽の未来を決めるのです。

自然熟成の方式ではバクテリアの種類を選ぶこともできず、かつ熟成に至るまでには多くの時間が必要とされることになります。

 


 3 土壌細菌について

  驚かれるかも知れませんが、太陽系の惑星 水金地火木土天海 の中で「」があるのは地球だけです。

それ以外の惑星のどこにも土はありません。

あるのは岩と砂だけです。

土は様々な自然現象と、そこに棲みついた動植物が気の遠くなるような歳月を掛けて作り出したもので、その中には微生物も含めた動植物の遺骸(有機物)が大量に含まれています。

つまり生命体の存在した地球だからこそ土ができたのですが、それらが存在しない他の惑星には土を作り出すメカニズムそのものがないのです。
 
 バクテリアもゼロから自然に湧いてくるものではありません。

必ずそのルーツがあるはずです。

水槽内に棲みついたバクテリアのそもそもの先祖は、 大気中から水槽に飛び込んできたバクテリア であることは前述しました。
ただしそれらのバクテリアの全てが水槽内に定着できるわけではありません。
水は苦手なんだよね、しょっぱいのは嫌だよ、などなど彼等が生き続けるのに適さない環境であれば、そのまま死に絶えてしまうからです。

大気中に浮遊しているあまたのバクテリアの内、水の中という条件に適合できたものだけが定着するのです。
 
 皆さんの水槽に飛び込んでくるバクテリアの大部分はもともと土の中で暮らしていた 土壌細菌 の仲間と考えられています。

皆さんが最も関心を抱くであろう 硝化細菌 も正規な分類学上は土壌細菌とされています。
大気中に浮遊しているバクテリアの多くが土壌由来の生い立ちを持っているのです。

新たに水槽をセッティングする場合、自然熟成を待つ粗放的な立ち上げ方式を選ぶか、熟成期間の短縮を期待して人為的にバクテリアを投入するかの選択肢がありますが、そのどちらにおいても主役のバクテリアは土壌細菌なのです。
 
 海水水槽の場合はどうなのかという素朴な疑問が当然湧き上がると思いますが、その場合も塩分耐性を持った土壌細菌が定着することで成立してしまいます。

もちろんライブロックなどを用いて海からの微生物導入をする場合に比べれば、本場の 海のバクテリア と たまたま塩っ気にも耐えられる 陸のバクテリア では、その後の水槽環境に大きな差が出るかも知れませんが、さしあたって魚が死なない浄化機能を立ち上げるだけであれば、両者にさほどの違いはありません。

なぜなら人工海水を用いても、時間を掛けさえすれば海水魚の死なない水槽を立ち上げることは可能だからです。
 
 一昔前の海水魚飼育では自然熟成だけで海水魚を飼われる方が結構いらっしゃいました。

天然海水の入手が難しい、海から離れた内陸部にお住まいのの皆さんにはその方法しか無かったからです。

そのようなハンデのある地域の方でも上手に海水魚を飼われている名人級の愛好者がいたということは、海のバクテリアと陸のバクテリアにさほどの違いはなく、多分それぞれの遠い祖先においてはかなり共通したDNAが備わっていたのではないかなどと想像をしてしまいます。

なぜならば陸上の生き物の祖先は皆海から上がってきたのですからね。

  新規に水槽を立ち上げて、魚を安全に飼える状態になることを 水槽の熟成が終わる とか 熟成が済んだ などという言い回しで表現します。

厳密な意味では飼育水の中にアンモニアや亜硝酸が検出されなくなった時点をもって熟成が終わったことになります。

アンモニアも亜硝酸も飼育生物には有毒な物質ですから、その濃度がゼロになった時点で、もう安全だよ という見極めをするからです。

自然立ち上げの場合、熟成完了までの期間は1ヶ月から2ヶ月とされています。

もうお気づきでしょうが、水槽に蓋をしてしまうと熟成が遅れることはご想像いただけますよね。

  ところが熟成期間を待てない我々凡人は、熟成が終わる前から飼育生物を投入してしまうケースが大部分で、かなり危ない橋を渡ることになります。

その場合には常にアンモニアや亜硝酸などの有毒物質と隣り合わせて飼わなければなりませんので、少しでもその濃度を下げるために頻繁な水替えをしながら熟成を待つことになります。

大型水槽などでは、この水替えの作業はかなりの重労働になりますので、その労力を省くためにも熟成期間は短い方が喜ばれることになります。
 

 熟成期間を短縮するには、大気中からのバクテリアの飛び込みを待つような悠長なことをせず、飛び込み量を遥かに凌駕する数のバクテリアを人為的に種付けしてしまえば良いという発想に行き着きます。 

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