ミトコンドリアの働き
2025/09/16
観賞魚の健康を支える小さな巨人の話
アクアリウムを始めたばかりの方にとって、魚たちが元気に泳いでいる姿は何よりも嬉しいものです。
しかし、水槽の中で生きる魚の健康を維持するには、見た目だけでなく、彼等の体の中で起きていることも知っておいてください。
ミトコンドリアという言葉を耳にしたことがあると思います。中学校で習ったかなという方が多いでしょう。
実はこの小さな細胞内の器官が、観賞魚の活性や健康、体色の美しさに深く関わっているのです。
魚の活動や成長を支えるエネルギーは、まさにこのミトコンドリアによって生み出されています。
つまり、魚の健康に留意するには、ミトコンドリアの働きにも注目しなければならないのです。
本記事では、アクアリウム初心者の方でも分かりやすいよう、ミトコンドリアの基礎知識から、魚との関係、日々の飼育で気をつけたいポイント、ミトコンドリアの活性を高める方法までを解説していきます。

ミトコンドリアとは?
ミトコンドリアは、生き物の体を構成するすべての細胞の中に存在し、「エネルギーを作る工場」として知られています。私たち人間をはじめとする哺乳類だけでなく、魚類や甲殻類などの動物、水中の水草、陸上の草木などの植物の細胞に必ず存在しており、目には見えないほど小さな器官ですが、生命の健康を支える非常に重要な役割を担っています。
細胞のエネルギー工場と呼ばれる理由
最大の役割は、栄養素と酸素を使って、「ATP(アデノシン三リン酸)」
というエネルギーを作り出すことです。このATPは、動植物が生きていくうえで必要なすべての活動、例えば筋肉の動き、細胞の修復、免疫の働きなどに使われます。
魚にとっても泳ぐ、食べる、成長する、繁殖するといったすべての行動も、ミトコンドリアが作るATPによって支えられています。ATPが不足すると、動きが鈍くなり、食欲を失ったり、病気にかかりやすくなります。
これらの不調は、なにがしかの原因によりミトコンドリアの活性が低下していることから引き起こされます。
また、成長速度が遅くなることや、体の発色が悪くなるといった変化も、ミトコンドリアのコンディションに負うところが大きいと考えられています。
免疫機能とのかかわり
ミトコンドリアは、エネルギー生産だけでなく、体を病原体から
守る免疫機能にも深く関わっています。
細胞は病原菌やウイルスなどに感染するとそれを察知し、免疫反応を促す警報が発せられます。
しかし、飼育環境から受ける過度なストレスなどによってミトコンドリアの活性が低下していると、免疫の働きも不十分で、病気の脅威を跳ね返すことができなくなってしまいます。
ミトコンドリアのコンディションを良好に保つことは、病気の予防にもつながるのです。
ミトコンドリアの活性を低下させるものとは
1 水温
水温はミトコンドリアの働きに影響を与える大きな要素です。
生物にはそれぞれの生存に適した適正温度というものがありますが、それを外れるとストレスとなってミトコンドリアのエネルギー生産効率が落ちてしまいます。
アクアリウムでは、もともと温暖な地域に棲息していたいわゆる 熱帯魚 を飼うことが多いようです。
日本には四季がありますから、寒冷期には水槽内にヒーター投入し、サーモスタットの設定温度に近づける加温をしなければなりません。
逆に温暖期、特に真夏には水槽用クーラーに循環水を通過させ水温を下げるなどの冷却もしなければなりません。ヒーターはさほど高価なものではありませんが、クーラーは決して安いなものでは有りませんので、それに代わる安価な方法としては水面にファンで風を送り、気化熱によって水温を下げることも可能です。
近年の温暖化によって、夏季には熱帯魚ですら耐えられない水温上昇が起こり、魚類が不調に陥るケースにしばしば遭遇します。これからも温暖化が進む限り 冷やす ことのウエートが高まると思われます。
懐の温かい方にはアクアリウムを置かれる部屋ごと温度コントロールのできる空調を設置する方法もあります。
ランニングコストの面からはこの方法が最も安上がりになります。
2 溶存酸素
ミトコンドリアは、酸素を使ってエネルギーを生み出すことは前述しました。
そのため、飼育水の酸素濃度が低下すると、エネルギー生産も滞り気味となり飼育生物の不調を引き起こします。
観賞魚が水面で口をパクパクしているような様子(鼻上げ現象)が見られる場合、酸素不足を訴えているサインですから早急に対処しなければなりません。
エアレーション(ぶくぶく)を投入したり、循環水の戻りを水面付近で波立たせるような工夫をしてガス交換の効率を上げなければなりません。
3 水質
アクアリウムは魚の生活空間であると同時に彼等の排泄場所でもあります。
想像してみてください。皆さんはトイレの中で生活ができますか?
この大きな矛盾を解決するには適切な濾過システムが必要です。
予算の許す限り処理能力のより大きいものを組み込むべきです。
これは水槽の見てくれを整える以上に重要な設備投資と考えてください。
魚の排泄物を起源とするアンモニアや亜硝酸といった有害物質は魚にストレスとして作用します。
ストレスは、ミトコンドリアの働きを妨げる大きな要因になります。
水質の悪化は目には見えにくいものですが、試薬や試験紙などを用いて定期的な水質チェックに努めましょう。
また飼育水の一部を定期的に交換し、有害物の濃度を薄め、徐々に不足してくる微量元素を補うことも重要です。
4 餌の品質、給餌量、給餌間隔
栄養が偏ったり、酸化の進んだ古い餌を与えるなどすると、魚のコンディションを損なうことがあります。
ミトコンドリアが効率よく働くためには、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなど、バランスの良い良質な栄養素が必要です。
医食同源と呼ばれますが、飼育生物たちも私たち人間と同様の因果関係にさらされているのです。
また魚の成長期、繁殖期などに合わせて「育成用」「繁殖期用」「色揚げ用」など目的に応じた餌の形状や成分を適宜組み合わせて与えることで魚の欲求(私たちの思惑)に合致した栄養を意図的に補うこともできます。
アクアリウム内の生物は基本的に愛玩動物でもありますから、私たちの感情としてどうしても餌を与えすぎる傾向がありますので、適正量を適切な間隔で与える努力も必要です。
私たちは食用の魚を養殖しているわけではありませんから成長を急がせなくとも良いのです。
また魚は1週間や10日餌を与えなくても死ぬことはありません。
腹八分目は人間も観賞魚も鉄則なのです。
ミトコンドリアを元気にする方法はないのでしょうか?
それがあるのです!!!
近年細胞内のミトコンドリアの活性が高まったり、その数を増やす要因が解明されつつあります。
5-アミノレブリン酸(5-ALA、通称アラ)というアミノ酸が発見されています。以後アラと略称します。
これはミトコンドリアが自ら作り出す物質の一つで、細胞内での濃度が高まると、ミトコンドリアの活性が高まったり数を増やすことが知られています。
一昔前には大変高価なもので、おいそれとは入手できなかったのですが、近年は光合成細菌(PSB)から抽出する技術が確立され、私たちにも入手が可能となっています。
価格が下がったことで研究が進み、様々な分野での活用が提唱されるようになりました。
経済原則としては当然のことなのですが、私たち人間の健康との関連性の解明が最優先に取り組まれており、そこから開発された人間用の様々な アラ サプリメント がネット上を賑わせています。
その延長線上として畜産や愛玩動物(四つ足)の健康保持や病気治療の効果を謳ったものも市場に出始めており、すでに一部の獣医師は病気治療の一環として投与を始めています。
実は観賞魚用の薬剤のほとんどは人間用や四つ足用のものを濃度を薄めて転用しているといった実情があります。
市場規模が小さいために観賞魚用の薬剤を製薬会社が作ることは絶対にありません。
魚病の治療に関して言えば、私たちはかなりお寒い条件で対処しなければならないのです。
ちなみに魚病の治療目的としてのアラの導入状況を特許公報などから調べてみますと、すでに出願の形でその効用を公開しているものがいくつもあります。
そのような場合、アラの濃度や使用頻度と病魚の生残率を比較する形で、治癒効果あるいは予防効果を認めるという論理展開になっています。
具体的には アラを餌料に添加する ことや、 飼育水に溶かして薬浴させる ことで魚体内のアラ濃度を高めます。
病魚の末端細胞内のアラの濃度が上昇すると、細胞内のミトコンドリアの
活性が高まったり数を増やしたりし、免疫機能や治癒能力が強化されて治療効果や発症予防に有効性が認められるようになるのです。
いくつかの治癒症例を見ると、従来の治療方法では決して十分な結果が出せていなかったものもあり、アラを用いた魚病対策が新たな治療方法として今後も増え続けて行くように思われます。
水槽の管理者としてここで考えなければならないことがあります。
アラの摂取は病気の原因菌やウイルスを殺すといった発想ではなく、ミトコンドリアへの働きかけによって自らの免疫機能を高揚させるメカニズムですから、これまで私たちが時間を掛けて築き上げた大切な水槽環境へのダメージがなく、昨今問題となっている耐性菌の問題も無視できることになりますので、安全性あるいは継続性の面で理想に近い治療方と思われることです。
翠水で購入可能なアラ商品
翠水では業界では初めての試みとしてアラの成分を含有するサプリメントを販売しています。
粉末状の 5-ALAパウダー、液体の5-ALAリキッド の2種類です。
アラの成分濃度は同じですので、使い方に応じて選択してください。


