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濾過について考える

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濾過について考える

濾過について考える

2025/11/08

 ​濾過について考える
 
 私たちは日々何の疑いもなくアクアリウムの景観に見入っています。心が癒やされる至福の一時と言えます。それは飼われている生物と、彼等が生活の場としている水槽環境に異変がないことが前提として実現されることです。水槽環境が平穏に維持されているのはなぜか、今回はそれを解明してみたいと思います。

 
トイレの中で生活できますか?

 あなたの生活の場がもしトイレの中だったらと想像してみてください。
ウーンとうなってしまう方が大部分ではないかと思います。
私たちは健康な毎日を過ごすために 食べる、消化する、排泄する という3つのパターンを繰り返していることになります。食欲は性欲、睡眠欲とともに三大欲求の一つに数えられますが、水槽内で飼育される生物たちにも当然共通するものであることは論を待ちません。
 

 食物の全てが分解されて栄養素に変換されてしまうのであればなんら問題はないのですが、食物の一部は消化しきれずに必ず残渣として残ります。それらは体内に留めておくことはできませんので、排泄という行為で体外に放出されなければなりません。
これは人間も魚も一緒です。問題はどこへ放出するかと言うことです。私たちはトイレという放出専用のエリアを持っており、そこは日常の生活とはある種の隔たりを置いた空間となっています。また放出された排泄物も多くは下水道を経て処理施設に送られます。下水環境のない場合でも浄化槽で処理したり、あるいは定期的に回収されて肥料などに再利用されることになります。私たちは排泄という行為と同時に排泄物から遠ざかることができるのです。一昔前ならいざ知らず、現代の私たちは排泄物と直接に接する生活はしていないことになります。

 

 アクアリウムに目を向けてみましょう。魚も日々餌を与えられ、当然の結果として出すものは出さなくてはなりません。私たちと違うのは彼等は隣接する生活空間に放出しなければならないということです。自然界であれば膨大な水量の水がそれらを運び去ってくれるのですが、水槽という限られた水量しかない空間においては自然界とは全く条件が異なりますので、飼育生物の周辺にそれが滞ることになります。
食事中に目の前をウ○コが流れてくる異常な空間で彼等は生活を強いられているのです。
 

 途上国の中には住居が池や川の上にある、いわゆる水上生活をされている方もまだおられるようですが、そこではトイレの排泄物が直接階下の水中に落ちるという、ボットン便所と水洗便所のいいとこ取りのような生活をしているところが残っているそうです。水中に落ちた排泄物は水中の魚が群がって食べてしまい、その魚は巡り巡って人間の食物になると言ったまさにSDGsな生活もあるやに聞きます。
水槽のように生活空間にトイレが隣接している環境をきれいに維持するにはどうしたらよいのでしょうか。


濾過すれば良い?

 

 濾過には様々な方式があり、近年の液体処理技術においては大変重要な位置を占めています。

ここではアクアリウムに関する方法論に限定して話を進めます。
 濾過は飼育水を浄化する手法の一つです。水の分子は小さいので、狭隘な空間を通過する際に水が抱えている様々な物質を空間内に閉じ込めて取り除くというのが基本的な概念です。
このとき形あるものを取り除くのが 物理濾過 と呼ばれるもので、大小様々な夾雑物が取り除かれるわけですから、そこを通過した水は透明度を取り戻した見た目にはきれいな水となります。

活性炭

 一方水は様々な物質を溶かしこんで運ぶという力がありますので、溶けているものを取り除く方策も必要になります。例えば匂いの原因物質や色素などは物理的に漉しとることができませんので、何かに吸着させて取り除きます。微細な空間を持った素材に吸着させる場合もあれば、化学反応を利用して取り除くことも可能です。これらを吸着濾過とか化学濾過と呼ぶこともあります。

 

さてこれからが本題です。
 私たちのウ○コが魚の餌になったように、魚介類の排泄物も水槽内の様々な微生物によって多くは餌としてさらに利用されることになります。原生動物であったり、バクテリアであったり、排泄物内の未分解な成分は形を変えて彼等の大切な栄養源として利用されるのです。飼育生物の排泄物として直接、あるいは排泄物をさらに分解した彼等の代謝産物として水中に放出されるもののひとつにアンモニアがあります。これが結構ヤバイ!!アンモニアは飼育水のpHがアルカリ側にあるときは NH3 のまま存在し、生物には猛毒物質として作用します。pHが酸性側に傾くと NH4+(アンモニウムイオン) となって毒性が弱まります。淡水魚飼育の水質は酸性が多いのですが、海水魚水槽のそれは概ねアルカリ性ですので、アンモニアの毒性がかなりの割合で残ることになります。これが海水魚飼育が難しいとされるひとつの要因とされています。
 

アンモニアの処理方法

 

 毒性の強いアンモニアをそのまま飼育水に溜めてしまうと飼育生物を飼うことができなくなりますので、何とかしなければなりません。最も簡単な方法は飼育水の全取っ替えです。アンモニアの溜まった水を全部捨てて、新鮮な水に入れ替えればアンモニアの脅威は取り除かれます。魚を飼うには 掛け流しが最も良い とされるのは、常に新鮮な水が供給され、有毒物質の濃度がゼロ近くまで希釈されるからです。
次に良いのは なるべく大きな水槽で、なるべく少しの生き物を飼う ことです。これなら有毒物質の濃度そのものが薄く維持されるからです。
これらの2つの方法を実現するにはそれなりの条件とコストが必要です。おいそれとは導入できない方法です。

 大きな水槽も掛け流しも高嶺の花である我々貧乏人はどうしたらよいのでしょうか。

そうです。濾過槽をつけるのです。
ここで言う濾過槽は前述の物理濾過や吸着濾過のことではありません。濾過槽の中の濾材にアンモニアを処理してくれる微生物を住まわせてしまうのです。その微生物は硝化菌と呼ばれるグループのバクテリアで、元々は土の中に住んでいるものです。何かの事情で土から飛び出し、空気中を浮遊している間に幸か不幸か水槽の中に飛び込んでしまったもの達です。
私たちが大きく深呼吸をすると、肺の中に10万匹ものバクテリアが飛び込むのだそうです。空気中にはそれほど多くの様々なバクテリアが浮遊していることになります。
ですから水槽に水を張って何もしなくても、日々何万匹、あるいは何百万匹、もしかしたら数億匹のバクテリアが水槽に飛び込んでいることが想像されます。

彼等の全てが水槽内に定着するかどうかは分かりません。いずれにせよ水槽を管理していれば毎日膨大な数のバクテリアが空気中から飛び込んでくるのだということを知っておいてください。その中に硝化菌がどれくらいの割合で混じっているのかは定かではありませんが、水槽内で活躍してもらう為の種菌として受け入れることになります。
 ちなみに硝化菌の増えるスピードは大変遅く、倍の数になる(倍加時間と呼びます)には1日半から2日掛かるとされています。種菌の数が多ければその後の活躍が早くスタートできることになりますので、市販の硝化菌や農業資材としての土壌細菌を投入して菌の増殖を促す手法も取り入れられています。種菌として最も効率の良いものは手持ちの他の水槽から底砂や濾材を投入して、すでに現役で活躍している硝化菌群を大量に移植することです。仮に底砂を半分取り出された水槽の硝化菌数が元に戻るには、理論上は2,3日で回復するはずですから、さほど大きなダメージとはならないことがご想像いただけるかと思います。

 

 それらのバクテリの内、魚の糞や餌の残りなど有機物を分解してくれるグループを 従属栄養細菌 と呼びます。従属という意味は 有機物という食料が必要 という意味です。
一方、有機物は一切いりませんアンモニアのような無機物さえあれば頑張りますというグループを 独立栄養細菌 と呼びます。
 水槽を魚が飼える安全な状態にするにはまず猛毒物質であるアンモニアを何とかしなければなりません。そこで働いてくれるのが、 アンモニア酸化細菌(亜硝酸菌) と呼ばれるグループです。彼等はアンモニアを酸化して亜硝酸に変えてくれます。ただし亜硝酸にもアンモニアに劣らぬ毒性がありますので、さらに処理を進めなければなりません。
亜硝酸はさらに 亜硝酸酸化細菌(硝酸菌) と呼ばれるグループによって酸化が繰り返され、硝酸に変えられます。ここまで来ると一安心でアンモニアや亜硝酸に比べると毒性はほとんど消えてしまいますので安心して生き物を飼える水質になります。

 

 どのようなバクテリアもその子孫を増やすためには餌(基質)が必要で、供給される餌の量によって棲息可能数がコントロールされることになります。
硝化菌が十分な数に増えていない状態の飼育水にはアンモニアはたっぷりとあるはずですが、硝化菌の体を構成する成分としてはアンモニアの構成元素であるN(窒素)とH(水素)だけでは足りません。菌の体もタンパク質で作られているわけですから、この二つの元素の他にC(炭素)とO(酸素)が必要です。その他にも微量の元素なども必要ではあるのですが、ここではそれを無視して話を進めます。

Cは二酸化炭素(CO2)Oは遊離酸素(O2)から取り込むことになります。硝化菌は好気性の細菌ですから水中の溶存酸素をふやそうとエアレーション(ブクブク)を投入することがあります。一方二酸化炭素は水に溶けやすく、また水から逃げ出しやすい気体として知られています。エアレーションは二酸化炭素を水中から追い出す効果が高いため、溶存酸素を高めようとあまり激しくエアレーションをかけ過ぎると、必要とされる二酸化炭素まで追い出してしまうこととなり、結果として硝化菌の増殖を抑制してしまうことにもなりかねません。この辺のさじ加減を誤ると、水槽の立ち上がりが遅れることになりますので注意が必要です。

 

 アンモニアと亜硝酸がすべて消え去った状態になることを 水槽が立ち上がった とか 熟成が済んだ などと表現をし、それに至るまでの間は頻繁に水換えをすることで、毒性を薄める必要があります。
硝酸はほとんど毒性はないので、魚類などでは数百ppmの濃度にも耐えるのですが、生物によっては数十ppmのわずかな量でもダメージを受けるものもあります。従って飼育生物の種類によって適正な硝酸濃度を維持しなければならないような事態も起こります。

 

 ここまでをまとめます。


飼育生物の排泄物由来の物質には大きく分けて2つの概念に分けられます。一つは形ある夾雑物や色・匂いなどの成分、もう一つは水溶物となって形の見えない化学物質であるアンモニアを起源とする窒素化合物です。ともに水槽管理上排除あるいは無害化しなければなりません。前者は濾材物質で漉しとったり,吸着させることで取り除きます。後者は硝化菌という微生物の働きで無害なものに変化させます。
これらの機能を併せ持ったスペースを濾過エリア、装置を濾過槽と呼びます。
水槽の底部に敷設されている 底砂 は微生物に広大な棲息エリアを供給することになりますので、昔から貴重な濾過スペースとして認識されていました。底砂内部に積極的に飼育水を通過させる 底面濾過 は今でも多くのユーザーが取り入れるベイシックなシステムとして評価されています。一方底面濾過の概念をさらに効率的にしたものが 濾過槽 あるいは 濾過装置 と呼ばれるもので、様々な濾材や飼育水の駆動方法を組み合わせたものが考案されています。
いずれにせよこれらの濾過スペースや装置を組み込み、水槽内の有害物質による飼育生物へのダメージを軽減させることでアクアリウムの安全性が担保されることになります。

 濾過については従属栄養細菌の働きや蓄積した硝酸を分解する脱窒についても述べなければなりませんが、そちらはまた日を改めてご紹介したいと思います。
 

 

 

 

 

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